プロダクトデザインにおける見立てに関する一考察
背景と目的
プロダクトデザインにおける造形手法の一つとして「見立て」がある。日本において、「見立て」は古くから文学や美術、建築で使われてきた手法であり、今日に至っても芸術家や建築家、デザイナーの発想法として使われている。また、「見立て」による造形は、その発想の面白さや奥深さから、それらを見たり使ったりする受け手に共感という形で伝わり、内省に働きかけることができる。プロダクトデザインにおいて、実際にそれによってデザインされた製品がその見立てられた対象の名前で呼ばれ親しまれることも多く、受け手の製品への愛着形成にも効果的である。
一方で、受け手の内省に働きかけること以外にも、ユーザビリティーの向上や感覚的な美的体験をもたらすなどの効果もあると考えた。本研究では、プロダクトデザイナーが造形手法の一つとして「見立て」を用いる際に、発想の一助となる拠り所を提示することを目的とし、デザイン試作を行う。
見立てについて
- なぞらえること。
- (芸術の技法)対象を、他のものになぞらえて表現すること。
プロダクトデザインにおける見立て
プロダクトデザインにおける見立ては、以下の三種類に分類できると考えた。
- 外面的、知的な要素を媒介とする見立て
- 内面的、情緒的な要素を媒介とする見立て
- MacBook Pro
- MacBook Pro
- 使いやすさを促す見立て
受け手による見立て
参考ページ
進捗記録
2024.07.19
見立てとは
- あるものとものの類似性を強調させて対象を別のもので表現する手法。
- あるものをそのものとして見るのではなく、何らかの都合により別なものとして認識する行為。
- 類似性を媒介にして、連想を喚起し、対象物を文節していく手法
2024.06.21
感性について
2024.06.21
論文の構成
第一章 序論
- エモーショナルデザインとは
感性について
認知と情動の三レベル
- 現代の家電製品について(仮)
家電における感性価値の重要性
感性価値イニシアティブ
- 見立ての手法とは
生物に見立てること
- 形態に着目する
人の感性に訴える製品の様々な要素の中から形態に絞って研究を進めた
第二章 事例
- 本能的デザイン
- アレッシィ ジューサー イカ
- ポルシェ 911 カエル
- バードイヤーピック(耳掻き) 鳥
- 行動的デザイン
- オタマトーン
- 深澤直人CDプレイヤー(生物ではないが)
- アレッシィ 茶こし
- 内省的デザイン
- ブランドのこと
- 美しさ
- 使用者の思い出
第三章 展開(持論)
- 三レベルそれぞれの評価基準
- 本能的デザイン
- 行動的デザイン
- 内省的デザイン
- 持論
第四章 制作
- 評価基準をもとに制作
- コーヒーメーカー
- 炊飯器 カエル
- 掃除機
第五章 総括
2024.06.07
人の認知と情動における処理の三レベルの「行動レベル」について
- デザインプロセスのスタート時からその基本的な部分である。
- 製品が完成してからはスタートできない。
- 体感的な感覚の喜びを満たす。
- 製品を使って楽しく簡単に目的を達成できたら、温かいポジティブな感情が残る。
- 良い行動デザインにおける四要素
- 機能
- 分かりやすさ
- 使いやすさ
- 物理的な感触
- 良い行動デザインのために
- ニーズを満たしているかどうか(01.機能)
- 人がどのように製品を使うかを理解すること→最初のステップ
- 理解しやすいかどうか(02.分かりやさ、03.使いやすさ、04.物理的な感触)
- 「いったん学んだら、忘れない」をモットーに
- ユーザーの行動に対する製品からのフィードバックが重要
- ニーズを満たしているかどうか(01.機能)
- 良い行動デザイン例
- メルセデスベンツのシート調整つまみ
(02.わかりやすさ)
- メルセデスベンツのシート調整つまみ
- 悪い行動デザイン例
- 鍵を上下逆さまに刺してしまうこと
- 車のなかに鍵を置いたままロックしてしまうこと
- 電池の向きが分かりづらいこと
- 製品の三つのメンタルイメージ(02.分かりやすさ)
- デザイナーのモデル
デザイナーの頭の中のイメージ。 - ユーザーのモデル
その機器を使う人がそれについて持つイメージと、それがどう動くかについてのイメージ。 - システムイメージ
製品と付属資料がもたらすイメージ。
- デザイナーのメンタルイメージとユーザーのメンタルイメージが同じでなくてはならない
- デザイナーは製品のシステムイメージを通してのみ最終的なユーザーとコミュニケーションをとれる
- デザイナーのモデル
2024.05.24
(藤巻徹『形態のエンタテインメントエレメンツ』より)
- シミュラクラ現象(類像)・パレイドリア効果(錯覚)
- 人間は本能的に視覚に入る対象を生物か否か判断している。
- 人間も動物として敵か味方か、害はあるか否か、その行動を瞬時に予測している。
- この人間の脳の習性が形における第一印象に大きな関連があるのではないか。
- マンガなどに登場するキャラクターやクリーチャーのモチーフ
- 多くが生物をモチーフとして展開されている。
- それはキャラクターの性質や特徴の他に、見る側にとって理解しやすく親しみやすい形態=生物という図式が意識下で成立している。
- さらにキャラクターの特徴を強調しつつ簡略化や省略化をする表現方法のデフォルメによる効果も印象の判断として影響している。
- 生物の形態をモチーフとし、かつ人を惹きつける要素を持つプロダクトの例
- 生物の形態をモチーフとし、かつ人を惹きつける要素を持つデザインプロダクトの条件
a:デフォルメ形態とプロダクツ機能のスマートさ
b:使い方における容易性と柔軟性の直感的理解
c:同等の機能を持つ製品が既にありそれを知っている
d:不使用時の視認的付加価値(または不使用時のメイン化)
e:サイズ(人間基準の感覚)
今日の製品例
2024.05.10
見立てが用いられ親しまれてきた製品例
2024.04.26
見立ての手法の段階分け
- 案1
- 写し・擬態
- 連想してしまう
パレイドリア 現象、安心感、人によって感じ方が違う
- 案2
- 見た目のみ(本能レベル・内省レベル)
- 見た目と機能が関連している(本能レベル・行動レベル・内省レベル)
アウトプットについて
上記の案1の段階に沿ったプロダクト × 3
2024.04.19
手法について
- 感性価値を高めるデザインの手法
- 感性とは
- エモーショナルデザインとは
- 本能的デザインとは
- 見立てのデザインとは
- 自然の中でのうつし、擬態の文化
- 創造の手法としての見立てのデザイン
- 受け手にとっての見立てのデザイン
- パレイドリア現象
- 形態からの共感
- 見立てのデザインの例
- 機能と見立てのデザインの繋がり
- ズレに関すること(思考の余白について)
- これまでの作品
2024.04.12
感性とは
- 物事を心に深く感じ取るはたらき。感受性。
- 外界からの刺激を受け止める感覚的能力。
- 刺激→感性→感情
ドナルド・ノーマンの『エモーショナルデザイン』
- 日常生活の製品において、役立つこと・使いやすいこと以外に「人が情動を感じることが重要である」と説いた。
- 人の認知と情動における処理の3レベル
- 本能レベル(本能的デザイン)→第一印象
- 行動レベル(行動的デザイン)→製品の使用、経験に関わる
- 内省レベル(内省的デザイン)→意識と最高次レベルの感情、情動、認知
- 「本能的デザインがエモーショナルデザインに最も強く関係する。」
本能的デザイン=反応的デザイン
『エモーショナルデザインの実践』橋田規子 より
これまでの取組
- 電気ケトルのデザイン
- 雑貨のデザイン
- 電気ケトルの感性的研究要素
- インテリアスタイルから考える家電デザイン
- インテリアスタイルから考える家電デザイン
- 雑貨のデザインの感性的研究要素
- 運動共感のプロダクトデザインへの応用
- パレイドリア 現象のプロダクトデザインへの応用
- 運動共感(kinaesthetic empathy)
- ある動きを観測した人が観測した動きを擬似的に感じるという知覚現象のこと。
- 風にたなびくカーテンを見て同じように風に吹かれたときの感覚を想起する。
「感じ覚え」のある動きや現象を見たとき、私たちの身体はそれに共鳴してしまう。 - この「感じ覚え」の法則を解読することができれば、人工物のふるまいが人々の中に呼び起こす感覚についてより自覚的にデザインできるようになるかもしれない。
『動きそのもののデザイン』三好賢聖より
- パレイドリア 現象
- パレイドリア(英: Pareidolia)とは、心理現象の一種。視覚刺激や聴覚刺激を受けとり、普段からよく知ったパターンを本来そこに存在しないにもかかわらず心に思い浮かべる現象を指す。パレイドリア現象、パレイドリア効果ともいう。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
- パレイドリア(英: Pareidolia)とは、心理現象の一種。視覚刺激や聴覚刺激を受けとり、普段からよく知ったパターンを本来そこに存在しないにもかかわらず心に思い浮かべる現象を指す。パレイドリア現象、パレイドリア効果ともいう。
- 運動共感の起源:感情移入美学
(もしデザインの応用が可能であれば、、)
ロバート・フィッシャー (ドイツ人哲学者)- 美学の分野において発展した「共感理論」の創設者
運動感覚についての言及(1873年博士論文) - ある物体や風景の美しさを感じるなかで、自分をその対象物に入れることでその対象物を感じる美的体験のことを指す。
- 動きのあるものも止まっていものどちらも対象物になりえる。
- エモーションレス・エンパシー(動きのない共感)
目にしている物体は実際には静止しているものだが、仮にそれが動き出したとしたら、どのような動きを見せるかということを想像することで、その対象物を感じとるという方法。 - 入り込むというプロセス。
- 美学の分野において発展した「共感理論」の創設者
研究について
- 研究の領域
- 学際領域
対象が複合的な研究
- 学際領域
- 研究のスタイル
- 野外科学
- 野外科学
- 研究の分類
- 応用研究
- 事象研究
- 定性的研究
対象の性質に注目して分析する研究
- リサーチ・スルー・デザイン
デザインや観察を通じて生まれる発見を紡ぎ合わせ、新たな知識体系を作り出すという研究の形