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山田洸太/デザイン総合研究 のバックアップ(No.77)


Fenestralismの概念創出

ー「窓的思考」による曖昧さの価値の再考

Fenestralism:A Framework of "Windowed Thinking" for Reassessing Ambiguity

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背景

 現代社会は、明快さとスピードを最優先するロジックのもとで動いている。政治やSNSでは立場を即座に表明することが求められ、経済活動では効率や即応性が価値とされ、都市空間や文化施設においても「短時間でわかりやすい満足」が提供されるべきだと考えられやすい。このような環境では、保留や逡巡、未決定といった「まだ結論が出ていない状態」にとどまることが許容されにくい。曖昧さや揺らぎは、非効率で説明しづらいものとして、しばしば排除または矮小化される。

 しかし、人間の心理や他者理解、さらには集団の共存という課題そのものは、本質的に単純ではなく、複数のレイヤーが重なり合っている。たとえば、都市の再開発では経済合理性、安全性、公共性、居心地などが同時に問われるが、それらは単一の指標に一本化できるものではない。同様に、ジェンダーや権利をめぐる議論では、身体的な条件や安全の問題、尊厳としての自己認識、法や制度の運用可能性といった異なる論点が絡み合っている。それにもかかわらず、現実の議論ではしばしば「どちらの正義を優先するべきか」という単線的な構図に還元されてしまう。この単線化は、複層的な問題を「どちらが勝つべきか」という対立の形式に変換することで、社会的分断をむしろ強化する。

 このような「即断と単線化」の力は、情報環境だけの問題ではない。資本主義の加速、グローバル化による生活圏の接触、行政や制度が追いつかないまま価値観だけが同居を迫られる状況など、複数の要因が重なっている。共存のコストや調整の負担は、しばしば個人側に押しつけられ、「うまくやれないのはあなたの寛容さが足りないからだ」というかたちで道徳化される。その結果、「揺らいだまま他者と共在する」ということ自体が、個人の忍耐の問題として扱われ、社会設計の課題としては語られにくい。

 芸術・文化の領域も例外ではない。美術館では、作品の前にどの程度とどまるかを来館者自身が任意に決められるという鑑賞スタイルが前提になっている。ただ、現在は事前予約制の導入や回遊動線の最適化など、短い滞在でも満足度を得られるように設計されたプログラムが増えている。ここでいう「とどまる」とは、作品の意味をすぐに決めることより、まだ言葉にならない感じや判断しきれない印象をいったん保持する時間を含んでいる。このタイプの時間は、効率化の指標では測られにくい。しかし現在は、集客効率や「わかりやすい展示」への圧力にさらされている。疑問や迷いを抱いたまま考え続ける行為は「非効率的」かつ「非合理的」とみなされやすく、代わりに即座に理解でき、SNSで共有しやすいコンテンツが優先される傾向が強まっている。曖昧さはもはや批評的な余白ではなく、消費可能な角の立たない安心感を売るためのデザイン要素として商品化されていく。

 本研究が問題にするのは、この「曖昧さの喪失」が感覚や趣味の問題にとどまらず、他者と共に生きる条件そのものを圧迫しているのではないか、という点である。揺らぎや未決定のまま関係を続けることが難しくなるとき、社会は二項対立化し、少数派と多数派のどちらかを切り捨てるかたちでしか調整できなくなる。そうした社会では、合意や制度設計のプロセスはますます荒くなり、結果として「誰かにとっての居場所」は失われていく。

 本研究は、曖昧さや揺らぎを「弱さ」や「未熟さ」とみなす価値観そのものを問い直し、それらをむしろ共存のための資源、すなわち維持すべきインフラとして捉え直す必要があるのではないかという問題意識に基づいている。

目的

 本研究の目的は、曖昧さや揺らぎをただ礼賛することではなく、それらを「社会の側でどのように保持させるか」を理論化し、実践的な設計指針として提示することにある。そのために本研究は「Fenestralism(フェネストラリズム)」という概念を提唱する。

 Fenestralismは、ラテン語の fenestra(窓)に由来する。窓とは、本来「透過(外部を見通すこと)」と「反射(自分自身が映り込むこと)」が同時に起こる場である。この二重性をモデル化した「窓的思考」としてのFenestralismは、他者と自分、公共と私的、制度と個人といった二項を単純に分けるのではなく、そのあいだに生じる重なりやズレそのものを前提にし、その揺らぎを維持したまま関係を続けるための枠組みである。

 ここで目指されているのは、多様性や寛容さといった道徳的スローガンでも、曖昧さに個人が耐えることの美徳化でもない。むしろ、揺らぎを前提としても共存が破綻しないように、空間・制度・ふるまいの側をどう設計しうるか、という主張である。言い換えれば、曖昧さを「個人が抱えて我慢するもの」ではなく、「社会が支えるべき余白」として捉え直す試みである。

 本研究は、このFenestralismを次の三つのスケールから検討する。

 第一に、思想・歴史のスケール(第2〜3章)。窓という装置の変遷、つまり外部へ開いた穴から、透過と反射を同時に生むガラス面へ至る過程をたどり、視覚文化や都市空間のなかで「内/外」の境界線がどのように揺らぐように設計されてきたかを確認する。その過程で、曖昧さがもともと関係をとりもつ装置であったことを示す。

 第二に、制度・空間のスケール(第4〜6章)。美術館や公共空間、SNSにおける共感の流通、政治的なカテゴリー化などを分析し、現代社会がどのように曖昧さを縮め、即断と単純化を制度的に正当化しているのかを明らかにする。同時に、曖昧さが無害な商品的イメージへと回収され、本来は問いを生むはずの契機が弱められている現状を描く。

 第三に、実践のスケール(第7章)。Fenestralismを、制度設計、都市運営、対話の場づくり、さらには散歩やプレイリスト編集といった日常的なふるまいとして具体化し、「揺らいだまま共在できる余白」を社会としてどのように保持できるかを検討する。本研究はFenestralismを「理想的な心構え」ではなく「余白インフラ」と位置づける。余白インフラとは、揺らぎを支える環境やルールそのものを、都市や文化や民主主義の前提として要求する考え方である。

 以上を通じて本研究は、次の問いに応答する。「曖昧さを抱えたまま他者とつながることは、もはやぜいたくな理想論なのか。それとも、分断を回避し資本主義のもとで生き延びるための現実条件なのか」。本研究は後者の立場をとり、その輪郭をFenestralismとして可視化する。



アウトプット

研究計画

参考

書籍

論文

作品







進捗記録






2025.07.14

各部ページ作成・整理

山田洸太/論文構成/第1部/限定
山田洸太/論文構成/第2部/限定?
山田洸太/論文構成/第3部/限定

Fluctuationismの読み方

カタカナ表記:フラクチュエイショニズム
発音記号:/ˌflʌk.tʃuˈeɪ.ʃən.ɪ.zəm/

社会の高解像度化の英語表記

英語表記:High-resolution Society

メモ

既に誰かが行った手法を知るということは大事です。歴史を知るということには、宝が隠れているのですから。かつて行われたことを現代に正しく合わせることでオリジナルが生まれることも知っておいた方がいいでしょう。(引用:村上隆『芸術企業論』P80)



2025.07.08

フィードバック

2025.07.07

ソーシャルデザインと現代美術

2025.07.05

現代美術(Contemporary Art)の定義と特徴

2025.06.03

ブラッシュアップ

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レポート執筆(第1章)

フィードバック

2025.05.27

フィードバック

2025.05.26

レポート執筆(第1章)

2025.05.13

フィードバック

窓の素材がぱっと見で窓っぽくないため、美術館等の展示作品を撮影したように見える。様々な角度や形の窓素材を用意する。そこに当てはめる合成素材も窓素材に合わせて台形補正する。さらに室内から撮影したもの、屋外から撮影したものもあるとバリエーションが増えてより良い。Webサイトに関しては、DnDで画像を変更できるようなものを検討する。



2025.05.12

フィードバックを基にブラッシュアップ

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まとめ

窓から見える実際の景色をそのまま残して画像を重ねると、重ねる画像の選択肢や表現の自由度が制限されてしまうことがわかった。今回は窓越しの風景を切り抜き、元の窓の写真を“額縁”として用いる試作を行った。このように額縁的に扱うことで、実際に展示する際にも、額縁の中にさらに窓枠が重なる“入れ子構造”のような視覚的効果が生まれ、視点の誘導や被写体の強調ができる。
また、ディスプレイでの展示においては、窓枠内の画像を自由に切り替えられるWebサイトを制作することで、鑑賞者自身がイメージの組み合わせを選択でき、より能動的な鑑賞体験へとつながる可能性がある。



2025.04.29

フィードバック

窓の周りの様子を暗くせず残すことで、窓の外の景色にのみ違和感を効果的に与えることができる。

試作

  1. エルガーラオフィスビルからの眺め
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  1. 水面
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  2. 木(ボケ)
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  1. 博多川対岸の景色
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  2. 電線
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  3. フェンス
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  4. 道路
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2025.04.22

本制作の表現おける造語

言葉によって存在が生まれる


試作

窓枠の外を暗くすることで、乗算で重ねた画像の情報を内側に制限する

メモ

リンク




2025.04.15

フィードバック

2025.04.13

課題

進捗

2025.04.07

旧背景と目的(バックアップ用)

2025.04.04

印象派と写真

写真の発明に対抗する形で、19世紀後半フランスで「印象派(Impressionism)」という芸術運動が起きた。そして、今、生成AIが登場し、イラストはもちろん、写真も簡単に生成できるようになった。そんな中で、今後写真はどのようにして生き残るのか。写真の発明が19世紀後半に絵を脅かしたように、今生成AIの急速な成長によって写真は一つの転換機を迎えている。

写真の二面性とその社会的認識

写真というメディアは、芸術表現であると同時に記録手段でもある。その捉え方は人によって異なり、その曖昧な立ち位置こそが写真という存在の特異性であり、魅力でもある。

しかし、一般的には「記録手段」として捉える人が多く、芸術的な側面が軽視されがちであると感じる場面がある。例えば、SNS上では、イラスト作品が無断転載された場合、強い反発が起こる。その一方で、写真については無断転載が横行しているにもかかわらず、大きな問題として取り上げられることは少ない。

これは、同じ視覚芸術の分野であるイラストと比べて、写真が創作物ではなく、あくまで「記録メディア」として認識されていることが一因ではないかと考える。

また、そのような認識を社会全体が持つに至った背景として、スマートフォンへのカメラの標準搭載も挙げられる。誰もが手軽に写真を撮れるようになったことで、写真の希少性や価値が下がり、創作物としての認識がさらに薄れているのかもしれない。

写真の持つ「芸術」と「記録」の両面性は、表現の幅を広げる利点である一方で、その存在意義が誤解されたり、軽視されたりするという課題も抱えている。

2025.02.20

タイトル案

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2024.12.19

参考

論文構成


関連書籍

2024.12.12

試作




2024.12.05

サイトの更新

2024.11.28

論文構成

3DCG

リアルタイムでは透明な情報を処理するのが難しい。対策としてはオブジェクトの周りを旋回する映像をレンダリングしてループさせる方法をとる。



2024.11.21

OHPフィルム試し刷り

メーカー粒子滲み方
MORIMOTO KASEIやや粗いやや滲む
A-one粗い滲む

どちらのOHPフィルムも、和紙のイシカワに比べて粒子を感じる仕上がりとなった。滲む点に関しては、よりインク量の少ない用紙設定をする必要がある。



2024.11.14

サイトの更新

新規ページ作成

参考

週末、アジア美術館で行われていた写真・映像メディア学科のゼミ展『すきま』を鑑賞してきた。そこでは、一部が破れた写真を前方に配置し、その隙間から後方に配置した写真が見えるという階層を意識した作品が展示されていた。何か参考になるのではないだろうか。

アイデア

メモ

2024.11.07

サイトの更新

OHPフィルムの保存法

購入候補リスト(販売元:Amazon)

※コクヨの製品は全て在庫切れ。入荷時期も未定。

メモ

フィードバック

2024.10.31

OHPフィルムへの印刷

用紙インクジェット用OHPフィルム(和紙のイシカワ)
サイズA4

明るい画像に関しては、想定してた以上に透明度が高く仕上がり、データ上で重ね合わせた時と近い見た目に仕上がった。展示ではライトボックスのように後ろから光を当てると良さそう。

フィードバック

2024.10.24

キーワード

アウトプット案

  1. 異なる画像を透明のものに印刷し重ねる
    アクリルに直接印刷するのは専用の機械が必要となるため難しい。ただフィルムだけでは展示する際に風で靡く可能性がある。透明のフィルムに印刷してアクリル板に貼るのが現実的。さらに多くのプリンタは白色インクに対応しておらず、白い部分が透けた画像になってしまう。写真の調整が必要。
  2. 上記の案を3DCGで再現する
    360度画像として作成することで、リアルでは不可能な展示が可能になる。あくまでもデータ上での成果物になるため、没入感の演出に工夫が必要。選択肢としてVRやARも。

ポジフィルムとネガフィルム

フィードバック

2024.10.21

サイト更新

山田洸太/社会の高解像度化/限定

2024.10.17

サイト更新

メモ

選択肢が白か黒しか存在しないことで、分断社会を生む。
→想像力の低下、デジタルメディアの発達が原因?
自分と異なる価値観を受容する。想像する力が求められる。



2024.10.10

ワードクラウド

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参考

2024.09.26

参考

2024.09.23

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キーワード

コンセプト(仮)

時間軸や空間軸の異なる画像を重ねることで、被写体の時間と空間を曖昧にする。「いつ、どこで撮影されたものなのか?」が曖昧な中で、構図の情報のみが明確な状態を作り出す。採用する構図は放射線構図であり、これは中心に向かって奥行きを強く感じさせる構図である。見方によっては、時間と空間が奥へと無限に続くような感覚に陥る。

アウトプット案(仮)

参考




2024.09.21

映像(画像)に透明フィルムに印刷した写真を重ねる。

参考

2枚の写真をオーバーレイで重ねる。

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2024.09.19

メモ

2024.07.12

メモ

統計

フィードバック

2024.07.05

更新

2024.05.24

メモ

2024.05.17

決まっていること

題材:窓
成果物:映像
表現方法:窓の部分にアニメーションをつける
背景:似たようなビルが立ち並ぶ日本の街並み。デザイン都市。
目的:

調査

用語集

2024.05.10

2024.05.03

アイデア

コンテンツ形態

参考

2024.04.26

メモ

2024.04.19

用語

キーワード

メモ

2024.04.12

作業一覧

関連ページ