博士前期課程 写真・映像領域 百瀬 研究室
都市における人間と植物の関係に関する写真表現
1975年の写真展「ニュー・トポグラフィックス-人間が変えた風景の写真」に始まり、工業化されていく風景の変容に対し、景観を中立的に観察するような視線が現れてきていた。日本の写真家もその風景表現の流れを受け、柴田敏雄は「日本典型」において、人工物によりあるがままの自然が侵食された風景を展示した。二種類のモザイク式がくっつくスペクタクルな景観には、自然が受けた取り返しのつかない破壊を示している。しかし、現状は大自然に注目しすぎると、都市の植物環境への関心を持つ人は少なくなる。従って、このような現状も記録する必要がある。
1. 関連する写真作品と文献を収集し、写真家の表現思想と方式を分析し総括する。
2. 研究資料において、理論上の支えを探し異なる表現方式がどのような感覚を与えるのか実験する。
3. 1、2の結果をもとに、デジタルカメラを用い、日本の都市で客観的な観察方法に撮影する。
ニュー・トポグラフィックスの作品は、大判カメラで撮影されていることにより、画像を拡大しても細部まで鮮明に描かれ、自然界の人工的な痕跡を一望できる。研究計画に沿い撮影された被写体は、気づかれない都市の植物である。そのため、aps-cカメラを通し、一定の画質を保証した上で、目下の都市植物の地位に暗合する。
撮影する際、二つの要素を確定した。一つ目は植物自身の状態と周りの環境、二つ目は意識的に人間を排除する。
作品は厳粛さと面白さを保ちつつ、周りの植物への注目を喚起することを通し、人間に植物との調和の在り方についての潜在的な問題を見直させる。それをもとに、都市における自然の痕跡に密接に触れられ、それらの社会と文化の意義を理解する。