日本の非都市圏では、過疎化や高齢化により、地域固有の文化が継承されにくくなっている。特に、何気ない日常の中に埋もれた文化的要素(慣習・風習・モノ・景観など)は、既存の「文化財」や「観光資源」としては認識されにくく、価値づけの対象になりにくい現状がある。
しかし、こうした「生活圏に潜む文化資源」は、地域住民の誇りやアイデンティティの源泉となり得るものであり、その再発見・再構築こそが、地域との持続的な関係性の再生に貢献する可能性を秘めている。
また近年、インバウンド観光を含む国主導の観光振興政策が進められているが、その多くは「分かりやすい文化資源」や「記号化された観光地」を中心に展開されており、観光資源が十分に可視化されていない地域との乖離が生じている。
本研究では、そうした地域に内在する「文化とも言えない文化」や「ふるさと的景観」に着目し、それらに新たな意味と価値を見出すことで、文化資源の再構築を試みる。
本研究の目的は、生活圏に埋もれた文化資源を再発見・再定義し、それを新たな価値として提示するプロセスを明らかにすることである。特に、他者にとっては価値が見えにくい「ふるさと的景観」や「見慣れた風景」に宿る意味を、写真や語りといったメディアを通じて捉えなおし、既存の観光資源とは異なるかたちでの「価値の見立て方」のありようを探ることを目的とする。
本研究では、以下の三つのアプローチを通じて文化資源の再構築を行う。
私の研究では、「ふるさと的景観に潜む文化資源」を対象に、写真と語りをメディア(=箱)として活用し、再発見と再定義を目指しています。既存の観光資源や歴史的遺物ではなく、日常の中に埋もれた価値に着目し、それを地域住民の記憶と結びつけながら、「誇りとなる文化資源とは何か」を探ろうとしています。