LogoMarkWhite.png

酒井菫/デザイン総合研究I のバックアップ(No.23)


デザイン総合研究 I

酒井菫

研究テーマ

自然と人間の共存を推進するためのプレゼントUXデザイン研究

研究背景

近年、森林はあと 100 年ほどでなくなると言われている。森林が失われれば、二酸化炭素の吸収・貯蔵が行 えることができなくなり、温室効果ガスを増加させ、地球温暖化が進行する要因になる。地球温暖化が進むと 異常気象を引き起こし、台風などの災害が起これば、今残る森林も失われるという悪循環に陥ることになる。 生活の中では実感しにくいが、私たちが今生活できているのは森林の存在があり、本来なら共生し、私たちが 守らなければいけない森林が、世界規模で破壊され続けている現状がある。
生きていく上で必要な部分はあるものの、過剰に破壊されていることから、それらを食い止めるため、環境 省を中心とした行政機関では様々な取り組みを行っている。
例を挙げるとするならば、日本のスナック菓子メーカー、カルビー株式会社は、環境配慮の取り組みや自然 を楽しむ企画を展開する「Jagabee Happee3プロジェクト」の1つである「Green Project」の第3弾をスタ ートし、第1弾、第2弾に続き「Jagabee(じゃがビー)」対象商品の売上の一部を寄付し、パーム油の一大生 産地であるボルネオ島の森林保全活動も継続して支援を行う取り組みを行なっている。また、自動車会社 TOYOTA では、だれでも気軽に立ち寄ることができ、自然の素晴らしさや価値を学ぶことができる場の提供 を目的に「TOYOTA の森づくり」という温暖化や自然災害の頻発など地球環境が危機的表状況にある中で、 クルマの環境負荷をゼロに近づける活動を推進するともに、森林の保護活動や多世代への意識改革に向けた教 育にも力を入れている。
そこで、私も新たな視点から森林減少を食い止めるために取り組めることはないだろうかと考え、自然の大 切さや自然が私たちにもたらす恩恵を他者に伝えたい、また、プロダクトも消費者も共に成⻑できる新しい体 験価値を生み出す UX デザインを完成させたい、と考えるようになった。

研究目的

「プレゼント」というのは、人類史において、非常に大きなテーマであり、最も身近でエモーショナルな行為である。プレゼントという人と人に最も身近でエ モーショナルな行為を改めて分析し、プレゼント UX をデザインすることを目的にする。そして、プレゼントの対象にするのはコスメプロダクツである。コスメプロダクツは自分自身に購入するケースが多い現状にあるが、クライアントに「誰かのプレゼント」として購入してもらうことを想定するコスメ、という新しい視点 のコスメを開発することにより、さらに新しい体験価値が生まれると考える。

研究方法

1 調査研究
既存のプレゼント事例のストーリーを可視化、自然をテーマとしたコスメプロダクツの事例収集を先行事 例とし、その形式と内容を分析し、より新しい体験価値が生まれるようなコスメプロダクツを目指したい。
2 作品制作
作品として、実際に Web サイトを立ち上げ、物販販売ができるようにしたいと考える。
手順1)マーケット調査やプロダクトの企画構想
手順2)企業ステートメント、企業訪問
手順3)販売促進計画、お客様とのタッチポイントのデザイン製作
手順4)プロトモデル製作
手順5)広告宣伝・ホームページ作成

期待される効果

自身が独自ブランドとして、コスメプロダクツにプレゼントとしてのユーザー体験を「花、植物」をモチーフにデザインすることで、強いインパクトを与えられると考えており、プレゼント行為自体の新たなスト ーリーを生み出し、商品そのもののデザインが豊かになると考える。そして、私の研究と成果が、地域貢献 にも繋がっていくよう、研究の成果を見出す。


進捗記録




2025.7.15

贈与経済(ギフトエコノミー)
人が人へものを渡す、サービス提供の時「これは贈り物である」という意識をもつことで、モノやサービスが流通していく経済システムである。


根幹として、見返りを求めずに何かを与える行為(例:おすそわけ)がある。

2025.7.8

リンク1:バレンタインは日本の独自の贈与文化の表れ?


リンク2「借りたものは、すぐ返さなくていい」 “贈与”は人と人をつなぐツールだった:文化人類学者・小川さやか

2025.7.1

マルセル・モースによる贈与論
・全体的社会的現象
モースは本書で「全体的社会的現象」をテーマとした。(全体的社会的現象:社会集団の宗教的、法的、倫理的、審美的、政治的、経済的な側面が一気に表れる現象で、いずれか1つには還元できない)。そうした全体的社会的現象として、モースは贈与と交換による全体的給付の体系を取り上げ、モースは全体的社会的現象が社会制度を活性化させると考えた。
・贈与の義務
1. 与える義務:与えるのを拒んだり、招待をしないのは、戦いをするに等しい。ヨーロッパの伝承にもあるように、招待を忘れると致命的な結果となる。
2.受け取る義務:贈り物を受け取らなかったり、結婚によって連盟関係を取り結ばない、といったことはできない。受け取りを拒むのは、返礼を恐れているのを表明することにもつながる。
3.返礼の義務:この義務を果たさないと、権威や社会的な地位を失う。権威や社会的地位が財や富に直結する社会では、返礼が激しい競争をもたらす場合がある。

モースの贈与論意味
与える義務関係を作る
受け取る義務関係を認める
返す義務関係を続ける



・贈与と霊的な力
モースは、贈り物は人に対してでありつつも、神々や霊、自然の存在を念頭になされている点を指摘。
この世にある物の真の所有者は神々や霊であり、したがって交換が必要な相手、交換が危険な相手、そして交換が容易な相手も彼らだという思想にもとづく。モースはこの点を契約=供儀(神仏や祖先などの霊的存在に、食物や動物などを捧げる宗教的な儀式のこと)につなげて考察。


結論:モースは全体的給付を現代に活かす意義について考察している。また、全体的社会的現象が社会制度を活性化させると考える。


贈与=社会のつながりを作る魔法の仕組みなのでは?


等価交換=対価さえ払えば、その人自身については問われない
(コンビニでのレジ会計など、物資をお金で買う=そこで関係が終わってしまう)
→本当の『交換』とは、アンバランスなものである。
見返りを求めずに何かを贈ったり、譲ったりすることで、人のつながりを回復し、心の充足を図ろうという贈与論が、改めて注目されているのではないのか?


参考リンク
贈与論ウィキペディア:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%B4%88%E4%B8%8E%E8%AB%96
私たちはなぜ贈るのか? 「贈与」を哲学する7つの問い。:https://fin.miraiteiban.jp/okuru03/




コスメ×贈り物(母の日)×化粧品の事例
ポーラ母の日

2025.6.24

欠席_:( _ ́ཫ`):_

2025.6.17

バイオフィリア仮説(Biophilia Hypothesis)

人間には生まれながらにして自然とのつながりを求める本能があるとする考え方である。
この概念は、UXデザインや建築、教育、心理学など様々な分野に影響を与えている。

分野応用例
建築 / インテリア「バイオフィリックデザイン」:自然光、木材、植栽を取り入れた空間づくり(例:オフィス、病院、学校)
教育森のようちえん:自然体験学習による自己効力感・社会性の向上
医療・福祉病室から自然が見えるだけで回復が早くなる
UX / UIデザイン自然の色・形・動きを模倣した癒し系アプリやプロダクト



提唱者:
エドワード・O・ウィルソン(Edward O. Wilson)
1984年に著書『Biophilia(バイオフィリア)』で提唱。


仮説:
人間は進化の過程で自然の中で生き延びてきたため、動植物や自然環境に対して生得的な愛着・関心・安心感を持っている。


背景と根拠:
1. 進化心理学的根拠
長い人類の進化史の中で、自然環境(植物、動物、水、風景)に注意を向けることは生存に不可欠であった。
etc)水がある場所を好む → 生存に必要な水源を確保する本能


2. 神経科学・生理学の研究
緑の多い場所にいるとストレスホルモン(コルチゾール)が減る。
森林浴によって副交感神経が優位になり、リラックス効果がある。


3. 行動観察・文化的証拠
世界中の文化で自然のモチーフ(木、花、動物)が美術・装飾・宗教に登場。
多くの人が自然の中で癒やしや回復を感じると報告。


具体例:
1. Amazon Spheres(アマゾン・スフィア)|シアトル(https://www.aboutamazon.jp/news/amazons-offices/office-tour-seattle-the-spheres
屋内オフィスに3万種類の植物を配置した温室型のワークスペース。
ストレス軽減・創造性向上を目的に設計。
(自然光、植栽、滝の音など五感への訴求)


2. Singapore’s Gardens by the Bay(https://www.visitsingapore.com/ja_jp/see-do-singapore/nature-wildlife/parks-gardens/gardens-by-the-bay/
都市部にある広大な自然庭園。
巨大人工樹「スーパーツリー」によって自然とテクノロジーが融合。
(都市スケールでの自然との共存デザイン)


3. Pasona Group 本社(東京)(https://pasona-nouentai.co.jp/start/content/
オフィスビル内で野菜を栽培する「都市農業×働き方改革」。
室内農園を通じて、社員の健康・環境意識・生産性を高める。
(UX要素として、育てる→収穫→食べるという一連の自然体験。)


結論:
現代人の自然欠乏症(Nature Deficit Disorder)が問題になっている中で、バイオフィリアの視点は、都市生活やテクノロジー社会における自然回帰の道しるべとなる。




自身の考え:
・人に「自然との接点」を贈ることは、根源的な安心感・幸福感を引き出すギフトになることを再確認
・バイオフィリアは「身体的」「感情的」「認知的」なレベルでポジティブな影響を与えるため、UX設計の感情設計(Emotional Design)と非常に相性が良いと考える。

2025.6.10

谷崎潤一郎氏による随筆「陰翳礼讃(いんえいらいさん)」


『陰翳礼讃』は、日本文化における「陰(かげ)」や「陰翳(いんえい)=光と影の微妙なグラデーション」を讃えるエッセイである。


主張:谷崎は日本の美の本質が、光と影、曇りやくすみによる「曖昧で静かな美しさ」にある。


ポイント1.日本家屋と光の扱い
日本の伝統的な住まいは、自然光をやわらかく取り入れる構造で、暗がりの中に美しさを見出す。薄暗い部屋でこそ、漆器や金箔などが最も美しく見える。


2.陰翳が生む美
西洋の「明るくて白い」空間ではなく、ほの暗く曇った空間に宿る美が日本文化の特徴。たとえば、和式便所や茶室の静けさ、灯の明るさよりもぼんやりとした陰影が大切にされる。


3.近代化と西洋化への批判
電灯・洋式建築・近代的な衛生設備の導入によって、そうした日本独自の美が失われつつあることを憂う。


4.素材と美意識
紙、漆、金、木といった自然素材のくすみや柔らかな光沢は、明るさではなく陰影の中でこそ魅力を放つ。

「陰翳礼讃」は、日本独自の美意識、光と影、静けさ、くすみと曖昧さに宿る美を称える随筆であり、西洋化や過度な近代化によって失われてゆく「陰影の美しさ」への惜別と警鐘が込められている


2025.6.3

九鬼周造氏による「いきの構造」


1. 日本的美意識を哲学的に捉えた先駆的な試み


九鬼は「いき」を単なる感覚や俗語としてではなく、文化的・歴史的・形而上学的な観点から整理し、哲学的な対象として分析した。これは当時の日本では珍しく、西洋哲学の方法論(カントやハイデガー的な思考)を用いて日本独自の美の概念を探求した点が画期的である。




2. 「いき」の三要素:意気、媚態、諦め

意気(いき)品と誇りを持った態度
媚態(びたい)異性を意識した魅力
諦め(あきらめ)運命を受け入れる内面的な潔さ



これらをもって「いき」という曖昧な美的感覚を定義づけた点が、九鬼の哲学的力量を感じさせる。




3. 西洋哲学との対話と差異の提示


九鬼は、西洋の「美」との違いを明確に意識していて、「いき」は合理性よりも情緒や空気感、関係性の中に生まれるものであると説いている。これは日本文化における「間」や「無常観」とも通じ、彼の国民文化論的な関心が見て取れる。




本文中の「軽微な平衡破却」分かりやすい解説>https://note.com/tamauzura/n/n84cbe5b72f71



2025.5.27

中沢新一氏による芸術人類学
基礎:
対称性人類学(比較的新しい人類学のアプローチであり、人の心の働きを探求するための新しい方法)


目指すもの:
①心の働きのおおもとの部分に対称性(論理的矛盾を飲み込みながら全体的な作動を行うこと)とよばれる知性の働きを捉えることによって、宗教、経済、科学、芸術にいたるまでの広大な領域でおこっている心の活動を一貫した視点から再編成しなおす


②新しい認識が新しい生き方の創出に結びついていけるような現実の中でも効力を発揮出来る実践的なサイエンスになること

taiwa.jpg

芸術:芸術家個人の幻想を越えた巨視的なビジョン
経済:贈与論的思考の復活
宗教:宗教をこえた宗教への飛躍の模索

2025.5.13

自分の研究を見つめ直しGW
1.最終成果物の変化
以前は実際に通信販売ができるような形にWebを制作(CADも使用)のみであったが、ディスプレイデザインも含めたい

最終成果物
・プロダクト(コスメスタンド、コスメツール)
・Web(オンライン)
・ポスター🆕(オフライン)
・ディスプレイデザイン🆕(オフライン)

オンラインとオフラインでそれぞれプレゼントUXを練る

2.Web慣れるための練習

3.文庫本入手
・誘惑する文化人類学(著:田中雅一)
・芸術人類学(著:中沢新一)




2025.4.29

そもそも、メイクをする理由とは?
❶心理的な効果を求める場合(外見をよく見せたい、自信を持ちたいetc...)
❷外的効果を求める場合(紫外線からお肌を守りたいetc...)




なぜ女性の方がメイクをする割合がおおきいのだろう?
参考文献:https://note.com/go_yo/n/nc2e244a8513b
→江戸時代初頭までは男女ともに化粧をしていた。しかし、明治時代に男性の役割(兵士として育成)、女性の役割(明確に家事や育児をするという役割)を割り当てられる過程によって、男性は兵士として外見を取り繕うことが徐々に減っていき化粧をしなくなり、女性は家事や育児をするためには男性を結婚しなければならず、外見美を求めてるため、化粧の習慣が残り、いまだに化粧をするという習慣が植えついたのだろう。

自分的素敵エピ>>[https://www.instagram.com/p/DIqsjaESSUd/?igsh=MWNmYnBvZmtuY3Znag==]




2025.4.22

キーワード





SDGs WASH:国連が定める17の持続可能な開発目標(SDGs)に取り組んでいるように見えて、実態が伴っていないビジネスのことを揶揄する言葉。




ロランバルトによる記号学:https://kotento.com/2017/08/17/post-296/

kibougaku.png

ソシュールの記号概念と聴き手の立場(著:成城大学 末永朱胤 )
https://www.seijo.ac.jp/graduate/gslit/orig/journal/europe/pdf/seur-30-05.pdf




人類学:ヒトの生物的な側面(形質人類学)と文化的な側面(文化人類学)を総合的に研究する学問


人類学の分野---
形質人類学:遺伝子、進化、骨格など、人間の生物的な側面を研究。
文化人類学:言語、文化、社会、宗教など、人間の文化的な側面を研究。
考古学:過去の社会や文化を、遺跡や遺物を通して研究。
言語人類学:言語の構造、社会における役割、文化との関係などを研究します。
人類学の方法:フィールドワーク、観察、インタビュー、データ分析など、多岐にわたる方法を用いて研究を行う。



人類学の重要性:人類の多様性を理解することは、他者への理解を深め、共存を促すことにつながる。また、現代社会の様々な問題(貧困、紛争、環境問題など)を解決するための手がかりを見つけることも可能。