博士後期課程 デザイン領域 三枝研究室
中国明清版画と日本浮世絵版画の表現及び材料、技法に関する研究
近年、版画表現の中で、「紙」が作品の質感や刷り上がり に大きな影響を与えることが改めて注目されている。本研究では、日本の和紙と中国の古紙(特に宣紙や竹紙)を比較し、それぞれの素材構成・吸収性・刷りの定着感に着目する。
本研究の目的は、版画における紙の選択が表現に与える影響を明らかにすること。特に、刷った瞬間の「滲み」「手応え」「色の沈み方」といった身体的や感覚的要素の違いを捉え、今後の制作に活かす視点を得ることを目指す。
(1)日本和紙における「柔らかさ」と「空気感」 和紙は、軽さと柔らかさ、空気感によって美的価値を築いてきた。楮や三椏などに加え、ネリを使うことで水中での繊維分散が安定し、流し漉きによって繊維が層を成して面を形づくる。漉く行為そのものが、水の流れと手の動きが呼応する身体的リズムとして、紙の肌理 に現れる。
(2)中国古紙における「実用性」と「精神性」 中国古紙は、書や水墨画の表現を支える実用性と精神性を 両立させながら発展してきた。特に宣紙は、筆の速度や墨のにじみを受け止める「場」として機能し、竹、桑皮、麻 など多様な素材と、大地に根差した工程によって作られる。 紙は単なる支持体ではなく、筆・墨・精神を媒介する存在と捉えられている。
-製紙紹介: https://web-japan.org/niponica/niponica18/ja/feature/index.html
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