デザイン総合研究I
渡邊和幸
研究テーマ
伝統工芸品を対象とした持続可能なデジタルアーカイブの構築と利活用モデルの提案
Proposal for the Construction and Utilization Model of Sustainable Digital Archives for Traditional Crafts
Chapter
Log
2025.12.04
第1章、第2章を追加 (限定公開)
2025.11.28
研究背景・目的を更新
2025.11.26
研究テーマから「九州の」を削除
2025.10.05
論文構成
研究の流れ
現状分析 → 設計・構築 → 評価・検証
1. 現状分析 (聞き取り調査)
- 調査対象: 伝統みらい研究センター
- 調査内容: 職員へのヒアリング: デジタルに関する知識レベル、Web運用の経験、工芸品のデジタル化に対するニーズや不安、日常業務の負担、利用可能な予算 など
- 既存情報の調査: センターで保有する工芸品の原稿のデータの管理状況 (台帳、写真、文書 など)
- 既存デジタルアーカイブの比較分析: 他地域や他分野の事例 (特に持続可能性の観点) を調査し、課題解決に対する要素を抽出
2. モデル設計とシステム構築
- 要件定義: 現状分析に基づき、「職員の習熟度にあった操作性」「低コストでの運用・保守」「工芸品の魅力が伝わるデザイン」を主要な要件とする
- システム設計
- バックエンド: 専門知識がない人でも、情報の管理がしやすいことを重要視
- フロントエンド: 利用者 (一般ユーザー、センター職員) にとって使いやすい設計にする
- UIの設計: 要件を満たすデザインのUIをFigmaを用いて構築する。このとき、デザインシステムも作成したい
- システム (Webサイト) の構築: 伝統みらい研究センターを対象に、選定された工芸品データや文献データを用いて、Webサイトを構築する
3. 評価と利活用モデルの検証
- 実証実験: 構築したWebサイトを実際に公開・使用してもらい、一定期間データの更新や情報発信を行ってもらう
- 効果測定
- 定量的評価: 職員によるシステムの操作時間、データ登録数、Webサイトのアクセスログ (利用者数、滞在時間) などを計測する。
- 定性的評価: 職員へのアンケートや再ヒアリングを実施し、システムの使いやすさ、業務負担の軽減度、デジタルへの意識変化を評価する
- 利活用モデルの確立と提案: 実証実験の結果に基づき、システム設計と運用マニュアルを改良し、「持続可能なデジタルアーカイブの利活用モデル」として体系化する
論文構成と研究の流れ
| 章立て | 内容 |
| 第1章 序論 | 問題提起: 九州伝統工芸品の情報発信の現状とデジタル知識の課題。 研究目的と意義: 持続可能なデジタルアーカイブモデルの提案による課題解決。 先行研究: デジタルアーカイブの課題・事例、芸術学・情報科学からの位置づけ。 |
| 第2章 九州伝統工芸品の情報管理・発信の現状と課題 | フィールドワーク・調査結果: 職員のデジタルリテラシー、既存管理体制の詳細な分析と課題抽出。 求められる要件: 持続可能性を担保するための具体的な要件(操作性、コスト、人材)の明確化。 |
| 第3章 持続可能なデジタルアーカイブの設計と構築 | モデル設計の理念: ローテク・利用者中心の設計思想。 システム・Webサイトの設計: データベース構造、メタデータスキーマ、管理画面と公開画面の具体的な機能設計。 プロトタイプの構築: 試行版システムの概要と実装。 |
| 第4章 利活用モデルの検証と効果測定 | 実証実験の実施: トライアル運用のプロセスと期間。 評価指標と結果: 定量的・定性的な評価結果の分析(使いやすさ、発信効果など)。 利活用モデルの具体化: 職員の関与度に応じた運用ステップの提示。 |
| 第5章 結論 | 本研究のまとめと成果: 提案モデルの有効性、学術的・実践的貢献の再確認。 今後の課題: 他地域への展開可能性、長期的なデータ保存の課題など。 |
2025.09.30
文化を残すためのデジタルアーカイブ
提案するモデルの必須条件
- 「文明」ではなく、「文化」を残す
- 利益は追求しないため、安価なシステムにする必要がある
- 同様に、長期的な運用が可能である必要がある
必要となる定義
- どのような状態にあれば文化を保存したことになるか
- サーバーにデータとして情報を保存した状態
- サーバーにあるデータを大衆が見やすい形で公開している状態
2025.09.22
論文テーマ再考
仮案: 九州の伝統工芸品を対象とした持続可能なデジタルアーカイブの構築と利活用モデルの提案
先行研究レビュー
- 日本における「デジタルアーカイブ」は、有形・無形の文化資産をデジタル化して発信するウェブサイトとして捉えられることが多い
- 一方で、英語圏、特にアーカイブズ学の文脈では「ボーンデジタルの記録」を指す場合があることなど、国内外で概念のズレがある
- 現状のデジタルアーカイブが直面している課題としては以下のものが挙げられる
- 作成コスト
- ビジネスモデルの不在
- 保存体制の未確立
- 継続性の欠如
- 著作権処理の困難さ
- 特に、システムの独自開発(スクラッチ開発)が、担当者の交代や予算縮小時にメンテナンスを困難にするという持続性を脅かす大きな要因である
研究背景
- 伝統工芸品における保存・伝承の課題: 九州地方には、豊かな歴史と文化的価値を持つ伝統工芸品が数多く存在する。しかし、後継者不足や需要の低迷により、その高度な技術や背景にある知識の保存・伝承が喫緊の課題となっている。このような状況に対し、デジタルアーカイブは有形・無形の文化資産を記録し、広く発信するための有効な手段として期待される。
- 「文化」の深い伝承の必要性: 日本のデジタルアーカイブ政策は、「産業化された文化」を経済的な価値として活用する側面に焦点が当てられがちである、という指摘もなされている。本研究が対象とする伝統工芸品においては、単なる産業振興の道具としてだけでなく、その制作過程や歴史、職人の思想といった無形の文化的文脈も含めて深く記録し、後世に伝承するアーカイブのあり方が求められる。
- 構築後の「機能不全」問題: 多額の予算を投じて構築されたにもかかわらず、プロジェクト終了後に保守・メンテナンスが継続できず、閉鎖や更新停止に追い込まれるデジタルアーカイブが数多く存在する。これは個別の機関の問題に留まらず、広く共有される課題となっており、数年後にシステムが機能不全を起こす事例は社会問題としても認識されている。
研究目的
九州の伝統工芸品を対象として、技術的・運用的の両面から「持続可能性」と「利活用性」を担保したデジタルアーカイブのモデルを提案し、その有効性をプロトタイプの構築を通じて検証する。また、どのような設計(デザイン)にすれば情報伝達の側面において効果的も検証したい。
技術選定
デジタルアーカイブの管理者が、簡単に編集することができ、長期運用が可能な技術選定が必要。
2025.07.18
現象学 (Phenomenology)
真理とは?
- 真理とは、「主観が客観を正しく言い当てること」とされる
- 「自分が正しく言い当てている」と主観で確信すること自体が難しく、誤認や勘違いが多いのが私たちの実生活
- このような問題を扱うのが「現象学」
現象学とは?
- フッサールが提唱した哲学で、「意識の中に現れる現象そのもの」を厳密に観察・記述する方法論
- 現象学では、「外の世界が本当に存在しているかどうか」は一旦判断中止(エポケー)する
- 例: 「目の前のコップが本当に実在するのか」→ とりあえず括弧に入れる
エポケーと現象学的還元
- 「青信号と思ったが赤だった」というような錯覚・勘違いも、「意識にそう映った」こと自体は否定できない
- 現象学では「主観に現れた意識の流れ」を純粋に観察する
- この観察のプロセスを「現象学的還元」と呼ぶ
ノエシスとノエマ
- フッサールは、意識の働き(意味づける作用)を「ノエシス」、その意味づけの対象を「ノエマ」と定義
- 例: 「私たちは机を見て"勉強用の机だ"と認識する」→ 意識の側が机に意味を与えている
- つまり、私たちはただ受け取るのではなく、意識の中で対象に意味を与えている
他者問題との限界
- フッサールの理論では、他者の存在も自分の意識の中の現象として処理されてしまい、実在感が希薄に
- この限界を乗り越えようとしたのが、ハイデガー、メルロ=ポンティ、レヴィナスなど
2025.07.08
Lagom
「Lagom」とは?
「Lagom」はスウェーデン語で、「ちょうどよい」「ほどほど」「過不足なく」といった意味を持つ言葉である。英語での直訳は難しいが、「not too much, not too little, just right(多すぎず、少なすぎず、ちょうどいい)」という表現が最も近いとされている。
Lagom の哲学的背景
Lagomは単なる節度や控えめさを意味するだけでなく、バランスのとれた生き方や持続可能性を重視する北欧の価値観が反映されている。これは以下のような社会的・文化的背景によって育まれた。
- 平等主義(Jantelagen):北欧諸国に根強い「みんな平等であるべき」という思想
- 福祉国家:過度な競争よりも、共に支え合う社会を目指すシステム
自然との共生:四季がはっきりしていて自然が豊かなため、調和と節制が文化に根づいている
Lagom の実生活での例
1. ライフスタイル
- モノを持ちすぎず、必要最小限で暮らす(ミニマリズムに近い)
- ストレスの少ない生活リズムを大切にする
2. 仕事とプライベート
- ワークライフバランスを重視
- 無理な残業はしない。効率と集中を優先
3. 食事と健康
- 食べすぎず、バランスよく
- オーガニックや地元の食材を選ぶ
4. ファッションやデザイン
似た概念との比較
| 概念 | 国 | 意味 |
| Hygge | デンマーク | 心地よさ・居心地の良い時間や空間 |
| Lagom | スウェーデン | ちょうど良い・節度あるバランスの取れた生活 |
| Wabi-Sabi | 日本 | 不完全さや儚さの中にある美しさ |
The World Is Our Interface: The Evolution of UI Design. - By Danielle Reid
Ambient intelligence の時代
現代では、コンピューターは日常のあらゆる場所に存在し、衣服・家・車・街路までもが巨大な U Iと化している。これが「アンビエント・インテリジェンス・ワールド」と呼ばれる新たなテクノロジー時代である。
UI デザインの歴史的変遷 (4つの時代)
- ツールの時代
- 人類は石に図像を描くなどしてコミュニケーションを開始
- ヒエログリフや絵文字など、象徴的なシンボルがUIの原点となった
- 機械の時代
- タイプライターなど、物理的機械がUIを担った
- 機械の操作性が求められ、ユーザーは使い方を習得する必要があった
- ソフトウェアの時代
- UI は画面上に移行し、ハードウェアのメンタルモデル(例:キーボード)がそのまま反映された
- スキューモーフィズム(現実を模倣した UI)が主流に
- 人間中心設計の時代
- タッチ操作やジェスチャー、音声など、直感的な操作が重視されるように
- 例:タブレットを触る赤ちゃん、ピンチ操作、Apple Pencilなど
デザインの課題と進化
- 課題
- ジェスチャーの隠蔽による発見性の低下
- ハンバーガーメニューや複雑なオンボーディングはUXを損なう
- スマートウォッチなど小型デバイスではタッチUIに限界がある
- 進化と対応
- AppleやGoogleは、スキューモーフィズムからミニマルデザインへ移行
- IoT製品(例:Nest Thermostat)は、現実世界の操作感覚を取り入れた良い例
- VUI(音声ユーザーインターフェース)は、ハンズフリーかつ直感的な体験を可能に
- UIの未来:体験のデザインへ
- Project Soliのような技術により、タッチレスで自然な操作が可能に
- スクリーン中心のUIは減少し、AIやIoTを活用した「体験のデザイン」へと進化
- デザイナーはUIそのものよりも、シームレスで人間らしいエクスペリエンス全体を設計することが求められる
参考: The World Is Our Interface: The Evolution of UI Design
2025.07.01
UIに関する法則を調査
渡邊和幸/Keywords
2025.06.24
西洋と日本における「シンプル」の違い
「引き算の美学」と「機能的な簡素さ」の違い
- 日本人の考えるシンプルは、「余計なものを削ぎ落とす」ことに重点がある
- 侘び寂びや禅の美学に通じるもので、静けさや余白、美しい不完全さを評価する
- 例:枯山水の庭園、白木の茶室、無印良品のデザイン
- 西洋のシンプルは「目的に対して最短距離で機能を果たす」ことが目的
- 効率的・合理的・無駄のない構造を指す
- 例:バウハウス、Appleのプロダクトデザイン、ミニマリズム建築
シンプルの中に「情緒」を残すか、「論理」だけにするか
- 日本のシンプルさは、感情や物語、空気感をあえて含ませる
- 例えば、「間」は物理的な空白ではなく、人の気配や呼吸を感じさせる余白
- 西洋のシンプルは、装飾や感情を排除し、構造的な明快さを追求する
- Less is more
「沈黙」の価値 vs 「明快さ」の価値
- 日本のデザインでは、何も語らないこと(沈黙や無言)そのものに意味や豊かさが宿ると考えられる
- 西洋では、曖昧さを避けてはっきりと伝えることが美徳とされる
結論
西洋における「シンプル」は合理性と効率性を軸にした機能的最小化であるのに対し、日本における「シンプル」は感性と余韻を重視した情緒的最小化である。
2025.06.17
禅とディーターラムスのデザイン哲学
禅の精神とラムスの哲学の共通点
| 禅の精神 | ラムスの哲学 | 共通点 |
| 余白の美、静けさ | 目立ちすぎず、控えめな美 | 控えめで心地よい存在感 |
| 本質の追求 | わかりやすさ、誠実さ | ユーザーとの正直な関係 |
| 長く使える価値 | 長寿命、耐久性 | 一時的な流行を超える普遍性 |
| 自然との調和 | 環境への配慮 | サスティナビリティ、倫理性 |
2025.06.10
ディーターラムスと「いいデザイン10の原則」
1. Good Design is Innovative. (革新的である) – 技術と共に進化し、真の進歩をもたらす。
2. Good Design Makes a Product Useful. (実用的である) – 実用性を重視し、不要なものを排除する。
3. Good Design is Aesthetic. (美しい) – 美しさが人の生活に影響を与える。
4. Good Design Makes a Product Understandable. (わかりやすい) – 製品自体が機能を語りかけてくる。
5. Good Design is Unobtrusive. (控えめである) – ユーザーを引き立てる存在として目立たない。
6. Good Design is Honest. (誠実である) – 誇張せず、ありのままを伝える。
7. Good Design is Long-lasting. (長持ちする) – 流行に左右されず、長く使える。
8. Good design is consequent to the last detail. (細部まで完璧) – 細部にまで配慮し、誠実さを示す。
9. Good Design is Eco-friendly. (環境に優しい) – 資源と環境への配慮を忘れない。
10. Good Design is as Little Design as Possible. (最小限に抑える) – シンプルに、本質だけに集中する。
UI に関連するものをピックアップ
2. Good Design Makes a Product Useful. (実用的である)
- ユーザーがすぐに使い方を理解できることが重要。
- 情報や操作の過剰な提示は混乱を生むため、目的に直結した最低限の要素を配置する。
- 例: Google のトップページ。検索という1つの目的に絞ってデザインされている。
- Keywords
- ユーザビリティ
- 必要最小限のUI要素
- 情報設計 (IA)
4. Good Design Makes a Product Understandable. (わかりやすい)
- ボタンやアイコン、ナビゲーションなどが直感的に操作できること。
- 例: ゴミ箱アイコン → 削除を示す。使い方を説明しなくてもユーザーが自然に理解できる。
- Keywords
- アフォーダンス (Affordance)
- コンテキスト
- 一貫性あるデザイン
5. Good Design is Unobtrusive. (控えめである)
- UI は主役ではない。コンテンツやユーザー体験が主役であるべき。
- 派手なアニメーションや過剰な装飾は、体験の邪魔になる。
- 例: Notion や Apple の UI → シンプルな外観で、ユーザーが集中しやすい。
- Keywords
- ミニマルデザイン
- ビジュアルノイズの排除
- 調和したUI
6. Good Design is Honest. (誠実である)
- UI はユーザーに正確な状態を伝えるべき(例:ロード中、エラー、保存完了など)。
- 誤解を生むような表現、ユーザーをだますダークパターンは避ける。
- 例: 進行状況バー、トースト通知などが誠実な情報提供。
- Keywords
- フィードバックの明示
- 正直なナビゲーション
- ダークパターンの回避
10. Good Design is as Little Design as Possible. (最小限に抑える)
- 「Less is more」な思想に基づき、本当に必要な要素だけを配置する。
- 複雑な機能でも UI はシンプルに整理されるべき。
- 例:モバイルアプリのシンプルなナビゲーション(ボトムバーなど)
- Keywords
2025.06.01
日本の伝統美術である「浮世絵」について調査
渡邊和幸/Keywords
2025.05.27
ブランド・アイデンティティの体系化
ブランド・アイデンティティ・プリズム
ブランド・アイデンティティ・プリズムは、ランド・アイデンティティの定義に必要な要素を、プリズム (六面体) の形で整理するフレームワーク。フランスの HEC 経営大学院の教授であるジャン・ノエル・カプフェレが提唱した。
ブランド・アイデンティティ・プリズムの要素
- Physique: ブランドの物理的特徴
パッケージ、ネーミング、カラー、ロゴ、キャッチコピー、ジングルなど、ブランドを物理的に表現するものを指す。店舗であればその概観や店内の雰囲気、Webサービスならユーザーインタフェースなども含まれる。
- Personality: ブランド・パーソナリティ
人は皆、独自の個性(パーソナリティ)を持っているように、企業もそれぞれのパーソナリティを持っている。そのパーソナリティを明文化したものがここに入る。
- Relationship: 顧客とブランドの関係性
名称の通り、顧客とブランドがどのような関係性を築くかを指す。顧客とブランドが、共通する価値観や目的、意義を通じて精神的に繋がり、顧客の行動にポジティブな影響を及ぼすとき、関係性ができたと言える。
- Culture: 文化
ブランドが持つ価値観や行動規範などの文化を指す。顧客がブランドの持つ文化に共感すると、強固なロイヤルティが形成される。
- Reflection: ブランドのターゲット
ブランドの主要な顧客となる人々はどのようなグループなのかを指す。性別・年代などの表面的なデモグラフィック情報だけでなく、心理的な特徴やライフスタイルを明確にすることが重要である。
- Self-Image: セルフイメージ
顧客自身が、ブランドと接したり、ブランドを思い出したりしたとき、自分についてどのようなセルフ・イメージを持つかを指す。
このように、ブランド・アイデンティティの定義に必要な要素を、2つの軸で整理・体系化したものがブランド・アイデンティティ・プリズムである。
2025.05.20
西洋的美意識と東洋的 (日本) の美意識の違い
美の価値観
| 西洋的美意識 | 日本的美意識 |
| 美の本質 | 永遠・完全・理想 | 無常・不完全・儚さ |
| 対象の捉え方 | 客観的・論理的 | 主観的・情緒的 |
西洋では、古代ギリシャのイデア論やルネサンス期の理想美の探求に見られるように、美は永遠不変で完全な理想像として捉えられる傾向がある。これに対して日本では、仏教的な「無常観」に根ざした価値観が強く、美とは「常に移ろい、やがて消えていくもの」、つまり儚く不完全であるからこそ尊いという考えが根付いている。また、西洋は理性や客観的視点を重視するのに対し、日本は感性や内面性を重視し、自然との一体感や情緒を大切にしている。
理念・哲学
| 西洋 | 日本 |
| 根底の思想 | プラトン的イデア、古典主義、ルネサンスの影響 | 仏教 (特に禅)、神道、自然崇拝 |
| 時間の感覚 | 直線的 (進捗・発展) | 循環的 (移ろい・自然との調和) |
西洋では、人間が理性によって自然を制御・発展させるという近代的思想の影響から、時間は未来へ向かう直線的なものとされ、美もまた進歩や完成へ向かうべき対象と考えられる。一方、日本の美意識では、自然や四季の移ろいとともに生きる感覚が根強く、時間は円環的に流れるものとされる。このため、刹那的な情景や一瞬の美が賞賛され、そこにこそ真実の美があるとされる。
美的概念の例
| 西洋的美意識 | 日本的美意識 |
| 完璧性 | シンメトリー、バランス、美の黄金比 | 不完全 (侘び寂び)、ゆらぎ |
| 色彩 | 鮮やかで明確、写実的 | 淡く柔らかい、抽象的・象徴的 |
| 空間 | 密度のある構成、装飾豊か | 間、余白、美しい空虚 |
| 表現 | 劇的、荘厳、明快 | 控えめ、含蓄、静寂 |
西洋美術では、理想的なバランスや調和を求めて、幾何学的構成や明快な色彩が多用される。それに対して日本の美は、不規則性や不均衡の中にある趣(=風情)を重視する。「侘び寂び」や「間」といった概念は、余白や沈黙、未完成にこそ美が宿るという価値観を示し、見る者の想像力や感性を誘う表現を尊ぶ。
芸術作品の比較
| 西洋的美意識 | 日本的美意識 |
| 絵画 | ルネサンス絵画 (ダヴィンチ等) | 水墨画・浮世絵 (葛飾北斎など) |
| 建築 | ゴシック建築、バロック建築 | 茶室、神社建築 |
| 文学 | ギリシア悲劇、シェイクスピア | 枕草子、俳句、和歌 |
西洋の芸術は、人間の理性・精神性を高らかに表現することを目的とし、スケールの大きさや構造の明快さが特徴である。これに対し、日本の芸術は、自然と一体化した小宇宙的な世界観を重んじ、静けさや簡素さの中に深い意味を込めようとする。たとえば茶室は、極限まで削ぎ落とされた空間に、精神的な深みや敬意が宿る設計である。
2025.05.13
『複製技術時代における芸術作品』と Apple のデザイン
ヴァルター・ベンヤミン (Walter Benjamin) 著
概要
- 芸術作品の本質:本来「一回性」や「真正性」を持ち、「アウラ」を帯びていた。(オリジナルしか存在しないため)
- 複製技術の影響:写真・映画により、芸術は大量複製され、オリジナル性が失われる。
- アウラの凋落:作品の神秘性・権威が薄れ、大衆にとって身近で平等なものになる。
- 知覚の変容:複製によって鑑賞の在り方が変わり、伝統や歴史性も崩れる。
アウラ: 一回性・真正性・「今ここ」にしかない存在感、速さ (臨場感・場の空気) / オリジナルなものの持つ重みや権威
アウラと複製技術
- 複製技術 (写真や映画など) はアウラを剥ぎ取り、人間の知覚を変容させる (例: 写真を撮る角度を変化させることで印象を変えられる)
- アウラは対象の本質ではなく、知覚される「幻想」に過ぎない
Apple 製品と「アウラ」の関係性
- 製品自体は反復性に属するメディア ( iPhone・Mac )
- 洗練されたミニマルデザイン (象徴性・唯一性の印象)
- Apple Store や発表イベント (WWDC) での演出
- 広告コピーで革新性・唯一性を強調(例:“Think Different”)
マイクロインタラクションはどのように働くか?
共通の動作をすることで使うたびに「これはApple 製品である」という強い実感・一体感が与えられる。
問
共通の動作をすることで使うたびに「これはApple 製品である」という強い実感・一体感が与えられるのならば、Apple 製品でなくても再現することは可能ではないか?
仮説
技術的には再現可能だが、Apple のような「擬似アウラ」を成立させるためには、単なる共通動作の再現以上の要素が必要である。
根拠
1. 共通動作は「手段に過ぎない」
- 共通動作 (例: スワイプ操作、トランジション、ハプティクス)だけでは、「機能の統一性」は得られても「ブランドの象徴性」は生まれにくい。
2. 文化的・歴史的蓄積が必要
- Apple製品の体験には、「過去から積み重ねられた期待値」や「世界観」が伴っている。
- 同じ動作でも、Appleが提供すると「これはAppleらしい」と感じさせるだけの歴史的重みと文脈がある。
3. 全体設計の一貫性
- Appleはハード・ソフト・サービスを垂直統合し、全体のデザイン哲学をコントロールしている。
- 他社が共通動作を模倣しても、それが複数のプラットフォームやOS設計思想にまたがると、一体感が崩れやすい。
4. 細部へのこだわり(マイクロインタラクションの質)
- 同じアニメーションでも、「速度感」「イージング(加減速の具合)」「触覚フィードバック」など、Appleはミリ秒単位で調整している。
- 他社がそれを模倣しても、「なにか違う」と感じるのはこの微細な設計感覚の差。
2025.04.29
物語の構成
3幕構成
1. 始まり (Beginning)
2. 中盤 (4幕構成)
3. 結末 (End)
1. 序 (Introduction)
2. 破 (Middle)
3. 急 (Rapid Ending)
4幕構成
1. 起 (Introduction)
2. 承 (Development)
3. 転 (Change)
4. 結 (Rapid Ending)
5幕構成
- フライタークのピラミッド (Freytag's Pyramid)
1. 提示部 (Exposition)
2. 上昇展開 (Rising Action)
3. クライマックス (Climax)
4. 下降展開 (Falling Action)
5. 大団円 (Denouement)
引用: https://note.com/ishimatsu/n/nd27fec422b1c
2025.04.22
マイクロインタラクションについて
- マイクロインタラクションの構成要素
- トリガー (ユーザーのアクションを促す要素)
- ルール (アクションによって何ができるか)
- フィードバック (何が起きたのか理解できる動き)
- ループとモード (どのような条件で上記3つを繰り返すか)
- 日常行動学の観点から
- 100ms単位のやり取り
- だるまさんが転んだのようにごく短いが確かに存在するやり取り