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馬場 さおり

馬場さおり BABA Saori

博士後期課程 写真領域 百瀬研究室 15号館 3F

(研究テーマ)
 病気を患った写真家としての作品表現と社会へのアプローチ

 ◯作品 2.7% ~若年性乳がんを発症した私~

 2013年1月、私はステージⅡb期の若年性乳がんと診断された。大学院博士前期過程1年在学中、35歳の時であった。腫瘍を取除く手術、(乳房温存手術)リンパ節を取り除く手術の後、2種類の抗がん剤治療、放射線治療が行われた。乳がんに対するごく一般的な標準治療であった。
 若年性の乳がんは、乳がん患者全体のたった2.7%にすぎない。また、若年性は一般的に予後が悪いという事を知り、論者は生まれて初めて自分の「死」というものに向き合う事になった。
乳がん手術は、女性の大切な目に見える部分にメスが入る。それは女性にとって、とても辛い事であることは言うまでもない。つまり人間として、そして女性としての生き方そのものにも影響を及ぼしてしまう。
 私は乳がんの告知後、セルフポートレートを撮り始めた。なぜならそれは、私が‘生きた証’を残す手段であったからだ。手術の副作用で、髪、眉毛をはじめ体毛がすべて抜け落ちた。しかし抗がん剤治療が終わり、徐々に髪が生えてくると、まるで心の中の霧が晴れた様に、とても元気な自分に戻れた気がした。
 写真を撮っている時は、無我夢中であった。手術の後や、抗がん剤の影響で息をするのもきつい中シャッターを押すことは、想像以上に体力と気力が必要だった。写真を撮る行為、撮られる行為には、ものすごいエネルギーが必要であることを改めて実感した。ただ、今の自分を写真に収めなければならないという使命感のようなものがそこにはあった。
 2015年3月、手術から1年後、(当時はまだ抗がん剤の治療中であった)ニコンサロン新宿で、写真展「2.7%〜若年性乳がんを発症した私〜」を開催した。そのことが、若年性乳がんについて少しでも知るきっかけになって頂けたのなら幸いである。

作品➡︎ http://www.saoribaba.com/saori-baba-official-website/photography/2-7/

◯作品 The View Through My Blood
 この作品は自身の乳がんの経験が私にもたらした事象や瞬間の見え方の‘変化’を視覚化しようと試みたものです。闘病生活の中で毎日の様に自身の血を目にした経験と、乳がん治療後、回復し元気になった今でも乳がんの細胞は血の中を巡っているという事実が、作品に自身の血を使いたいと思った大きな理由です。
 この作品は私の日常生活を切り取った日記の様なものです。しかしながら、私にとってのあたりまえの日常は、他の人から見たら奇異な非日常として写るのかもしれません。しかし、ありのままの自身の日常を作品にしました。
プライベートな瞬間や私の視点を公開することは、頭の中を見られているようでとても恥ずかしいことなのですが、今の自身の視点を視覚化し、形に残すこと。そしてそれを通して、少しでも人々と繋がれるとしたら、それは、私の存在意義を再確認できるひとつの方法だと感じています。

作品➡︎http://www.saoribaba.com/saori-baba-official-website/photography/the-view-through-my-blood/

展覧会、研究発表、プロジェクト活動等

[個展]
2015 「2.7% ~若年性乳がんを発症した私~」新宿ニコンサロン(東京)
2016 「The View Through My Blood」ソニーイメージングギャラリー銀座(東京)
2016 「Bachata en Fukuoka」ソニーストア福岡天神(福岡)

[グループ展]
2014 「On the way~道の途中~」コニカミノルタプラザ(東京)
2015 The Emerging Photography Artist 2015 六本木アクシス(東京) ソニー賞受賞
2015  倉敷フォトミュラルf (倉敷)
2016 三菱商事ゲートアートプログラム入賞展(東京)
2016 新世代アートフロンティア展(福岡)
2016 倉敷フォトミュラルf (倉敷)
2017  ウムQ 九産大芸術学部作品展(福岡)

[その他の活動]
2013 米国National Geographic誌 英語版8月号に編集者選出でYour shot掲載
2016 モーターマガジン社 月刊カメラマン9月号「カメラマン最前線」にて7ページに渡って特集される。
2016 三菱商事アートゲートプログラム入賞。作品買取。
2016 新世代アートフロンティア展入賞。

ホームページ
http://www.saoribaba.com


博士前期課程 写真領域 (大島研究室) 2015年3月修了
15号館 3F

研究テーマ

 現在、人、物、情報の国際的移動と、経済の地球規模での自由主義・市場経済主義が拡大し、世界のグローバル化が加速している。近年、日本政府も外国人労働者や留学生の受け入れ促進が進めており、外国人の人口は1991年末の122万人から2011年末の208万人へと20年間で7割増加している。
 世界のグローバル化は、世界経済の融合と連携深化や異文化交流の機会の増加等の利点もあるが、経済的格差や社会問題の世界化等の問題点も指摘されている。
 しかしながら、もはや世界的なグローバル化の波を止める事は不可能であり、世界情勢や日本政府の方針から考えても、今後日本でも国際化が益々進んで行くだろう。

 日本は周りを海に囲まれている島国であるが、太古の昔から外国人が持ち込んだ様々な文化を学び習得し独自の日本文化を形成して来た。鎖国の時代であっても出島での貿易は途絶える事はなく、開国後は西洋文化が大量に流入した。そして、戦中戦後と常に外国の影響を受け発展して来た。
 それにも関わらず、日本人にとって大量の外国人を移民として受け入れる事に対しては、大きな抵抗かあるというのか現状であろう。そして、残念な事に西欧人や英語に対するコンプレックス、アジア人に対する偏見といったものが、まだまだ存在する事は紛れもない事実である。
 また、私自身の留学や大学の留学生会館で働いた経験から、日本人は外国人に対してとても排他的であるという現状を知る事となった。それは島国である日本と陸続きで四方を外国に囲まれているヨーロッパ諸国等との地理的、歴史的要因の違いが根底にあるのであろう。しかし、交通の発達によって人や物の流れが活発になりインターネットで世界中と簡単に繋がれる現代であっても、日本人の外国人へ対する偏見や’壁’は取り去る事は出来ていない。日本は諸外国に比べ’本当の意味での国際交流’がなかなか進んでいないということは紛れも無い事実である。
 無論、文化や言葉の違いも国際交流、国際化の障害になっていると考えられる。だが、実際彼らと深く付き合うと、文化や言葉の違いがあったとしても根本にある’人間’という部分は、みんな同じだという当たり前の事に再度気付かされる。そういった瞬間の彼らの様子を写真作品にする事で、日本人にある外国人に対する’壁’の様なものを壊したいと思い作品を制作した。

 私と外国人の友人との関係は、ジェットコースターの様である。外国人だけでは対処できない様々な事を手助けをする事で、急速に私達の仲は深まっていく。そして、彼らの置かれている状況、精神状態、何を考えているかに至るまで手に取る様に分かるようになる。
 しかし、日本に在住しているほとんどの外国人はいつか母国に帰る。つまり日本での生活というのは、彼らの人生においては、特別なあるいは特殊な時間である。しかし、私にとってここ日本での生活は日常の世界だ。
 私の日常は、彼らの非日常なのである。
 そしてその関係は、彼らの’帰国’により、’強制終了’されたかの如く、全く違うものになってしまう。だから、この儚い’今’を写真に納めたいと思うのだ。そしてこの作品が外国人に対する偏見を見直すきっかけになって欲しいと願う。

《 作品: Bachata en Fukuoka 》

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展覧会、研究発表、プロジェクト活動等

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Last-modified: 2020-03-17 (火) 17:08:18